フィンランドの首都、ヘルシンキ市ではここ数年、市内の子育て世帯が急増しています。同市によると、昨年は主に近郊から1万8,000人の転入超過があり、子ども1,515人が新たに市内の保育所に通い始めました。

 これほどの保育需要の急増は、待機児童を生み出したのでしょうか。答えは否です。

 「希望する子ども全員が保育所に通っています。待機児童はいません」。ヘルシンキ市の幼児教育担当専門職のハサリ・アランさんは強調します。市は出生率や人口動態予測により、市内で保育を希望する子どもの人数を予測。「十分に余裕を持って、施設を確保しますから」とアランさん。

 ただし、子どもが希望する保育所に通えるとは限りません。保護者は市に申込書を提出する際に、第5希望までを列挙。この第5希望にほぼ入ることができるといいます。市は遅くとも2カ月以内に、入れる保育所を提示しなければなりません。

 それを可能にしているのは、保育所数の多さと、定員に余裕があること。人口62万人のヘルシンキ市には市営328ヶ所、民営114カ所の計442カ所の保育所があります。定員約2万8,800人に対し、通う子どもは約2万6,000人。まだ2,000人以上の余裕があります。

 日本の都市と比べると差は歴然としています。フィンランドに幼稚園はないため単純比較は難しいですが、名古屋市がヘルシンキ市と同じ人口だったとすると、ヘルシンキ市の施設数は3.9倍、定員は2.5倍になります。

 フィンランドでは、1973年に保育所法が施行され、希望する子ども全員が保育所に通えるようにするため、自治体に対策を義務付けた。このため「1980年代は人口流入が激しく待機児童のリスクがあったが、今はない」(アランさん)。親が働いているかいないかは、入所条件ではないといいます。

 同国では、法律で3年間の育児休業を取得できます。このため、子どもが小さい間は母親が育休を取って自宅で子育てすることが多いです。ヘルシンキ市で保育所(家庭保育を一部含む)に預けられている子どもの割合は▽ゼロ歳児0.2%▽1歳児23%▽2歳児58%▽3歳児78%▽4歳児87%▽5歳児88%-となっています。保育所がしっかり整備され、残業がほとんどない働き方の違いもあり、3年間の育休を取った後は職場復帰し、フルタイムで働くのが普通だといいます。

 アランさんは「人生の最初の数年間は発達や成長に最も重要な時期。子どもたちが遊ぶための十分な時間とスペース、施設を持てるようにするのが行政の義務です」としています。

 

◆日本の「隠れ待機児童」約6万人

 日本では、保育所に通う子どもが増加しています。昨年4月には233万人で、10年前に比べ34万人増えました。行政は新設を急いでいるが、全く追いつかない状態。保育所に入れない待機児童数は昨年4月時点で2万3,000人に達しました。

 希望した保育所に入れずあきらめたり、認可外に入ったりしている「隠れ待機児童」も約6万人。背景には、保育需要が急増している半面、保育士が不足していて設置場所の確保も難しく、新設が進まないことがあります。

 日本で保育所に通う子どもの割合は、▽ゼロ歳児13%▽一、2歳児38%▽3~5歳児46%(ほかに幼稚園44%など)。低年齢児がヘルシンキ市より多いのは、育休が法律で1年間しか保障されていない影響とみられます。長時間労働のため、子育てとの両立をあきらめて、フルタイムの仕事をやめていく女性も多いです。結果的に幼稚園に通う子どもが半数に上っています。